アルミの押出製品は、複雑な形状の成形可能な素材特性を活かして、ユーザーのご要望に沿った形状を実現することが出来る材質です。また、表面処理を施すことにより装飾性、耐蝕性、対候性といった機能を加えること出来る素材です。
今回は、そんなアルミ押出棒の中でもアルミ押出材の代表鋼種であるA6063の押出製品の設計のための基本的な指針を紹介していきます。
A6063押出材の成分
合金番号 | Si | Fe | Cu | Mn | Mg | Cr | Zn | Ti | Al |
A6063 | 0.2-0.6 | ≦0.35 | ≦0.1 | ≦0.1 | 0.45-0.9 | ≦0.1 | ≦0.1 | ≦0.1 | 残部 |
A6063は上記の通りAl-Mg-Si(マグネシウム・シリコン)系で6000番台の押出材として代表される鋼種です。A6061やA6005C(旧A6N01)より強度は劣りますが押出性がよくアルミ合金の中で最も多く使用されている押出材です。
A6063押出材の機械的性質
合金番号 | 質別 | 引張強さ(㎟) | 耐力(㎟) | 伸び(%) |
A6063 | T5 | 150以上 | 110以上 | 8以上 |
A6063 | T6※ | 205以上 | 170以上 | 10以上 |
A6063押出材の物理的性質
質別 | 導電率 (20℃, IACS,%) | 熱伝導率 (25℃、kW/(m・℃)) | 線膨張係数 (20~100℃×10-⁶) | 縦弾性係数 (×1000Kg/kgf/mm²) | 比重 | 溶解温度範囲 (℃) |
T5 | 55 | 0.21 | 23.4 | 7.00 | 2.69 | 615-655 |
T6 | 53 | 0.20 | 23.4 | 7.00 | 2.69 | 615-655 |
A6063の物理的性質の特徴は、アルミニウム全般に言えることですが、やはり比重の軽さです。同じ形状の押出材ではステンレスや伸銅品よりも軽く扱いやすい材質と言えます。
A6063押出材の製造範囲
製造範囲(形状)
ビレットサイズ (インチ) | 押出機能力 (トン) | 最大外接円 (mm) | |
ソリッド形状 | ホロー形状 | ||
6 | 1,500 | 110 | 110 |
7 | 1,650~1,800 | 146 | 125 |
8 | 2,750 | 175 | 155 |
10 | 4,000 | 226 | 200 |
12 | 4,000 | 300 | 250 |
ソリッド形状
ホロー形状
A6063押出材は大きく分けてソリッド形状とホロー形状に分かれます。棒材、T型、平角型、H型に代表される形状をソリッド形状、パイプや多穴形状などはホロー形状と呼ばれます。
製造可能断面サイズ
形状 | 最大幅 (mm) | 最大高さ (mm) | 最小板厚 (mm) |
フラットバー | 300 | 17 | 100 |
角パイプ(正方形) | 180 | 180 | 3 |
角パイプ(長方形) | 200 | 100 | 2.5 |
角パイプ(長方形) | 300 | 60 | 2.5 |
丸パイプ | φ210 | 5 | |
丸棒 | φ70 | - | |
チャンネル | 250 | 75 | 3 |
その他にも、角棒、SRZ型、H型、T型、C型、ヒートシンク形状、多穴ホロー形状、フレーム材も製作可能です。製造の可否についてはこちらからお問い合わせ下さい。
製造可能サイズ(長さ)
生地材 | 最大12m |
アルマイト材 | 最大6.2m |
上記の範囲内において任意の断面形状のものが製造可能です。断面形状に中空部分を含むものをホロー形状、含まないものをソリッド形状といいます。ホロー形状の方が製造範囲が狭くなります。
A6063押出材の製造納期
A6063押出材を一から作る場合、初回はダイスの製造分納期が長くなります。形状や大きさにより様々ですが、ダイス製作に約1ヵ月、押出加工に約1ヵ月ほどかかることが一般的です。また、その後の表面処理や追加工によっては更に納期がかかることもあります。
A6063押出材の用途
A6063は押出材として建築用、機械構造用、自動車用等様々な用途に使用されています。我々の日常生活においても目にすることが多い材質です。
建築関連
足場、仮設資材、看板枠、高速道路の透光板、安全柵等
家電・電機・自動車関連
ソーラー枠、サンルーフレール、トノカバー、トラック用ボディーパーツ、ロボット部品、ガラス搬送用ラック等
事務機器類
XYプロッター用レール、プリンター用ペーパーガイドローラー等
装置治具類
半導体製造用ウェハーキャリア、リードフレームマガジン、スティックマガジン等
その他
クリーンブース、架台、踏み台、作業台等
A6063押出材の製造工程
鋳造
アルミニウムの地金を溶解しビレットを製造します。A6063の場合、SiとMg等の元素を添加します。それを一般的にはT5処理(高温加工から冷却後人工時効硬化処理したもの)を行います。
ダイス製作
A6063は設計自由度の高い形状が可能な材質です。メーカーはお客様からの図面データを元に設計、製造されます。ダイスは機械加工によって製作され、熱処理、窒化処理などが行われます。
押出加工
A6063のビレットを切断し400℃~500℃に熱します。切断されたビレットは押出機にセットされ、高い圧力をかけてダイスを通りトコロテンのように押し出していきます。
整直・切断
押出機を出た材料はストレッチャーで矯正され、まっすぐにされます。その後、長い材料を任意の長さに切り揃えられます。強度を高めるためエージング炉にて熱処理を行い強度を高めることができます。
表面処理
切断された材料はアルマイト処理という材料の表面を酸化被膜でコーティングする表面処理により耐食性、対候性、耐摩耗性が向上します。また、装飾性の観点からも必要な表面処理と言えます。
加工・組み立て
表面処理を終えた材料は押出メーカーや、機械加工業者にて機械加工行われることがあります。機械加工でミクロン単位での切削加工や穴あけ加工も可能です。その後、商品によっては組み立てまで行います。
梱包・出荷・納品
検品された押出材はメーカーから日本全国の工場に出荷され、組み立てられ、世界中で人々の使用する製品となります。
A6063押出材の一般在庫品
A6063の押出品には、一からのオーダーメイドだけではなく市中に流通している形状、サイズもあります。数本単位からの購入ができるというメリットがありますが、規定のサイズ、寸法しかなく自由な形状が必要な場合はやはりオーダーメイドが必要になります。また、一般的に在庫品はオーダーメイドに比べ価格が高くなる傾向になります。
A6063押出材の規格
- A6063平角棒
- A6063アングル(Rなし)
- A6063アングル(Rあり)
- A6063四角棒
- A6063丸棒
- A6063不等辺アングル
- A6063チャンネル(Rなし)
- A6063チャンネル(Rあり)
- A6063四角管
まとめ
- A6063は複雑な形状を製作できる。
- 建築関係、家電、自動車関係、事務機器関係、装置治具関係、ヒートシンク等様々な場所に使用されている。
- 表面処理(アルマイト)により耐食性、強度、耐摩耗性を向上することができる。
- 機械加工によりミクロン単位の加工や、より複雑な形状の製作が可能。
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