ステンレス鋼とは鉄(Fe)にニッケル(Ni)やクロム(Cr)を添加し耐食性を向上させた合金鋼です。
その中で最も一般的で、幅広く使用されているのがオーステナイト系ステンレスです。
オーステナイト系ステンレスは耐食性を向上させるためにクロム(Cr)を、オーステナイト組織を安定するようニッケル(Ni)を含む合金鋼です。
今日はオーステナイト系ステンレスの代表鋼種であるSUS304と、SUS303について解説いたします。
目次
SUS304とSUS303の成分表
鋼種 | C | Si | Mn | P | S | Ni | Cr | Mo | Fe |
SUS303 | ≦0.15 | ≦1.00 | ≦2.00 | ≦0.20 | ≦0.15 | 8.0~10.0 | 17.0~19.0 | ≦0.60 | 残部 |
SUS304 | ≦0.08 | ≦1.00 | ≦2.00 | ≦0.045 | ≦0.03 | 8.0~10.5 | 18.0~20.0 | - | 残部 |
上記の通りSUS303はSUS304と比べ硫黄(S)とリン(P)の含有量が多く、これにより切削性を向上させています。 ただし、硫黄(S)とリン(P)を添加することにより熱間加工性を害し、溶接が必要な場合は支障をきたしてしまいます。また、耐食性は硫黄(S)を含まないSUS304の方が優れています。
SUS304とSUS303の耐食性
SUS304とSUS303を比較した場合、SUS303の方が耐食性は劣ります。特に湿気の多い場所や水分が触れる場合はSUS304を使用しなくてはいけません。医療用途、食品用途にSUS303が使用できないのはそのためです。
SUS304とSUS303の切削性
SUS303には硫黄(S)とリン(P)が含まれているため切削性はSUS303の方が良好です。旋盤加工時にSUS304は連なった切粉となりますがSUS303はパラパラと細かく途切れた切粉になります。また、SUS304では刃物がもたない場合でもSUS303ならすんなりと削ることができる場合もあり、結果的に加工費を抑えることができる場合もあります。
SUS304とSUS303の磁性
オーステナイト系ステンレスであるSUS304とSUS303は共に非磁性のステンレス鋼です。ただし、冷間での加工時に加工硬化により磁性を持つこともあるので注意が必要です。
SUS304とSUS303の溶接性
SUS303に含まれる硫黄(S)とリン(P)は熱間加工性を害する作用があり、溶接には向いていません。よって、溶接が必要な場合はSUS304を使用する必要があります。
SUS304とSUS303の材料費
SUS304よりSUS303の方が一般的に若干ではありますが高くなる傾向があります。当然、購入ロットや購入時の規定によっても違いますので一概には言えませんが。
SUS304とSUS303の流通性
丸棒・六角棒・四角棒
丸棒(センタレス、引抜、ピーリング)・六角棒・四角棒は共に多く流通しており、入手は容易です。ただし、SUS304の方が全体的に細かいピッチで寸法が設定されていることも多いです。
平角棒
平角棒はSUS303も流通していますが、SUS304の方が寸法ラインナップが豊富です。表面も#400、HL等豊富なラインナップが流通しています。
薄板(冷間圧延)
薄板(冷間圧延)は、SUS304のみ流通しています。それは、SUS303が切削を想定した材質であること、薄板の主な用途が一般板金用であることが主な理由です。
厚板(熱間圧延)
厚板(熱間圧延)はSUS304、SUS303共に流通しており、入手は容易です。ただし、SUS304の方がより多く使用されることから入手はより容易です。
パイプ
パイプは基本的にはSUS304が流通しており、色々な形状(丸パイプ、角パイプ、平角パイプ等)、表面(#400、HL等)が流通しています。SUS303は紐付き品等で持っている問屋さんがあるかもしれませんが、基本的には流通していません。
アングル・チャンネル
アングル・チャンネル等の型鋼もSUS303は流通していません。構造用として使用されることを想定しており、切削性を求められる形状ではないことが挙げられます。
SUS304・SUS303の規格寸法
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