C2801とC3604の丸棒について

快削黄銅六角棒

C2801の丸棒は在庫でお持ちですか?最近、多い問い合わせの一つです。

RoHS規制の問題もあり鉛レス化を意識し、このような問い合わせが増えているように感じます。

残念ながら答えはNoです。

鉛レス黄銅銅棒については後日投稿いたします。

まずはC2801とC3604の成分の違いを見ていきましょう。

C2801とC3604の成分表

旧称旧記号CuPbFeZnその他
C2801黄銅3種Bsx359.0~62.0≦0.10≦0.07残部
C3604快削黄銅2種BsBMx257.0~61.01.8~3.7≦0.50残部Fe+Zn=≦1.2

御覧の通り、大きな違いとして鉛の含有量にあります。

C2801は0.1%未満に対し、C3604は1.8~3.7%含有されています。

鉛を添加することにより切削性が向上し、微細な切粉になります。その一方で展伸性、かしめ性、曲げ加工性が悪くなります。

ちなみに鉛は現行(2020年3月現在)のRoHSでは規制対象となり、0.1wt%以下の許容量となります。しかし、C3604(快削黄銅棒)は4.0wt%までの含有を許容されております。

ただし、C3604は鉛に関しては大丈夫でも、カドミウムの含有量で現行のRoHSに引っかかる可能性があり、そういった場合はカドミウムの含有量を規制値以下に低減しているカドミレス材を使用する必要があります(RoHSでは100ppm以下)。

C2801とC3604の用途

C2801

プレス部品、電機部品、配線器具、コネクター、神仏具、銘板、建築用金具

板や条が流通しており、曲げ加工やしぼり加工、プレス加工が必要な部品に使用される。

C3604

ボルト、ナット、ねじ、歯車、機械部品、水栓金具、ガス用品、バルブ、時計部品、カメラ部品、ライター

棒材が多く流通していることから、切削加工に用いられることが多い。

C2801とC3604の流通性

C2801は板、条が市中に多く流通しており、板材(1/4H)の場合、サイズは0.2tから30.0tまで存在します。面削材(F材)なら100tを超える厚みのものまであります。厚板は切り出して、フライスやマシニングセンター等による加工用に使われます。条は0.2t~2.0t程度までが多く流通しています。

C3604は丸棒、六角棒、四角棒等のが流通しており、φ2からφ400程度まで存在し、中径棒以上は押出(BE)、中径棒から小径棒は引抜(BD)となります。

C2801とC3604の形状と寸法

用途で記載した通り、C3604は棒材、C2801は板条が流通しております。

C3604の寸法表

C3604一般材

C3604カドミレス材

C2801の寸法表

まとめ

  • C2801の丸棒は流通していない
  • C3604は一般材、カドミレス材共に棒材が流通している
  • C2801は鉛の含有量が少なく、板条が多く流通している (RoHS規制の数値内)
  • C3604は現行RoHS規制に対応しているカドミレス材が流通している
  • C3604は切削性が良好である
  • C2801は展伸性が良好である

追記

鉛レス快削黄銅棒について

早ければ2021年7月で適用除外から外れ鉛の含有量を1000PPM、カドミウムの含有量を10PPM以下になってしまうため、 各メーカーが鉛レス黄銅棒を開発、販売しています。

鉛の代用としてシリコン(Si)を添加した黄銅棒やビスマス(Bi)を添加した黄銅棒があります。

冒頭でもお伝えしていたように、鉛レス快削黄銅棒についての詳しい記載は後日投稿いたします。

鉛レス黄銅棒の寸法表

C6801(BZ5A)

C6932(エコブラス)

その他、詳しい内容についてはこちらからお問い合わせ下さい。

【快削黄銅】 C3602とC3604の違いについて

快削黄銅とは普通の黄銅に鉛を添加し、切削性を良くした材料です。以前は『BSBM1』『BSBM2』という名称(旧JIS記号)で呼ばれていた快削黄銅棒ですが、今では一般的に『C3602』『C3604』という名称で広く知られています。

C3602は快削黄銅1種 C3604は快削黄銅2種で区別されます。

C3602・C3604の成分について

主成分及び用途は以下の通りです。

種類旧称旧記号CuPbFeZnその他の規定
C3602快削黄銅1種BsBM159~631.8~3.7≦0.5残部Fe+Sn≦1.2
C3604快削黄銅2種BsBM257~611.8~3.7≦0.5残部 Fe+Sn≦1.2

成分表に記載されている通り、C3602とC3604は銅と亜鉛の割合が異なります。 では、成分の違いでどのような特徴があるのでしょうか?

一般的にC3602は銅の割合が多いため、C3604と比べ冷間鍛造性に優れています。また、多少の曲げ加工やかしめ加工もC3604と比べると優れています。 しかし、やはり快削黄銅(鉛入り)ですので、無理な加工では割れが発生する可能性があります。切削性はC3604と比べると材料に粘りがあるため、くるくると巻いたような切断粉になります。 C3604はC3602に比べ、より切削性が良く、切断粉は細かくなるためより機械加工に向いているといえます。 ただ、ここで一つ注目していただきたいのが、C3602とC3604は銅と亜鉛の割合がかぶっているということです。 場合によってはC3602より粘いC3604、またはC3604より削いC3602がある可能性がでてきます。 そこで、各社はJISの規定より細かく成分配合を設定しています。サンエツ金属新日東工場の一般材を例に見てみましょう。

記号サンエツ金属材質名主要成分特色
C3602H60.8Cu-3Pb-Znかしめ性・汎用性
C3602N59.5Cu-3Pb-Zn汎用性
C3604S58.2Cu-3Pb-Zn汎用性
C3604SS57.2Cu-3.6Pb-Zn汎用性
C360241960.5Cu-2.2Pb-Zn転造性・かしめ性

このように、流通量が少ないもの、または流通していないものもありますが、よりユーザーの希望に沿った商品を作っています。流通していない材質、製作に関してはこちらからお問い合わせ下さい。

C3602・C3604の用途

主に精密機械部品・水栓金具・冷凍機器、また磁性を帯びない、いわゆる非磁性であることで電気計器部品・コンピューター機器・通信機器・エアコン部品などに多く使用されています。歯車やネジ等の微細な加工にも適しています。変わった用途としては、日本古来の神仏具にも多く使用されています。

また金・銀・ニッケル・クロムなどのメッキやロウ付けが容易なのでキッチン・トイレなどの水回り関係といった多種多様の用途があります。

C3602・C3604の流通性

上記で説明した通り、一般的に切削加工を行う場合、C3602よりもC3604の方が好まれます。 そして一般的に現物を入手しやすいのもC3604です。 細径サイズ(主にΦ2~Φ6)は流通していますが、中径から太径に関しては在庫対応している問屋は少なく、例えばC3602のΦ40を1本欲しいという要望に対しては入手が難しい場合もあります。C3602が必要であれば最少ロットで製作することも可能です。黄銅棒メーカーはC3602引抜丸棒の場合、Φ2以上Φ75以下のサイズを最少300kgから、またかしめ性と転造性を兼ね備えた、いわゆる重かしめ材という材質にて製作することも可能です。

またC2801の棒材はありますか?答えはNOです。 C2801とは60Cu-40Znのいわゆる六四黄銅と言われるもので、板もしくはコイル材しか市場に流通しておりません。この材質は加工の際に素材が柔軟に変形して破断しない、いわゆる展延性に優れており、建築用金具などにもよく使用されます。機械加工してみるとその違いは一目瞭然で、プレスで潰した場合、C3604は割れてしまいますが、C2801は伸びがよく粘りが違います。加工方法によってはC2801の棒材が欲しいという声を聞くことがありますが、残念なことに前述通りC2801の棒材というものは市中に存在しません。

C3602・C3604の寸法表

一般材

カドミレス材

まとめ

  • C3602はC3604に比べて粘りがあり、かしめ、冷間鍛造に向く。
  • C3604はC3602より切削性がよく、より機械加工に向く。
  • 中径、太径はC3604が多く流通している。
  • 細径はC3602も流通している。
  • C3602・C3604共に300Kgから製作可能。
  • C2801の丸棒は流通していない。