【快削黄銅】 C3602とC3604の違いについて

快削黄銅とは普通の黄銅に鉛を添加し、切削性を良くした材料です。以前は『BSBM1』『BSBM2』という名称(旧JIS記号)で呼ばれていた快削黄銅棒ですが、今では一般的に『C3602』『C3604』という名称で広く知られています。

C3602は快削黄銅1種 C3604は快削黄銅2種で区別されます。

C3602・C3604の成分について

主成分及び用途は以下の通りです。

種類旧称旧記号CuPbFeZnその他の規定
C3602快削黄銅1種BsBM159~631.8~3.7≦0.5残部Fe+Sn≦1.2
C3604快削黄銅2種BsBM257~611.8~3.7≦0.5残部 Fe+Sn≦1.2

成分表に記載されている通り、C3602とC3604は銅と亜鉛の割合が異なります。 では、成分の違いでどのような特徴があるのでしょうか?

一般的にC3602は銅の割合が多いため、C3604と比べ冷間鍛造性に優れています。また、多少の曲げ加工やかしめ加工もC3604と比べると優れています。 しかし、やはり快削黄銅(鉛入り)ですので、無理な加工では割れが発生する可能性があります。切削性はC3604と比べると材料に粘りがあるため、くるくると巻いたような切断粉になります。 C3604はC3602に比べ、より切削性が良く、切断粉は細かくなるためより機械加工に向いているといえます。 ただ、ここで一つ注目していただきたいのが、C3602とC3604は銅と亜鉛の割合がかぶっているということです。 場合によってはC3602より粘いC3604、またはC3604より削いC3602がある可能性がでてきます。 そこで、各社はJISの規定より細かく成分配合を設定しています。サンエツ金属新日東工場の一般材を例に見てみましょう。

記号サンエツ金属材質名主要成分特色
C3602H60.8Cu-3Pb-Znかしめ性・汎用性
C3602N59.5Cu-3Pb-Zn汎用性
C3604S58.2Cu-3Pb-Zn汎用性
C3604SS57.2Cu-3.6Pb-Zn汎用性
C360241960.5Cu-2.2Pb-Zn転造性・かしめ性

このように、流通量が少ないもの、または流通していないものもありますが、よりユーザーの希望に沿った商品を作っています。流通していない材質、製作に関してはこちらからお問い合わせ下さい。

C3602・C3604の用途

主に精密機械部品・水栓金具・冷凍機器、また磁性を帯びない、いわゆる非磁性であることで電気計器部品・コンピューター機器・通信機器・エアコン部品などに多く使用されています。歯車やネジ等の微細な加工にも適しています。変わった用途としては、日本古来の神仏具にも多く使用されています。

また金・銀・ニッケル・クロムなどのメッキやロウ付けが容易なのでキッチン・トイレなどの水回り関係といった多種多様の用途があります。

C3602・C3604の流通性

上記で説明した通り、一般的に切削加工を行う場合、C3602よりもC3604の方が好まれます。 そして一般的に現物を入手しやすいのもC3604です。 細径サイズ(主にΦ2~Φ6)は流通していますが、中径から太径に関しては在庫対応している問屋は少なく、例えばC3602のΦ40を1本欲しいという要望に対しては入手が難しい場合もあります。C3602が必要であれば最少ロットで製作することも可能です。黄銅棒メーカーはC3602引抜丸棒の場合、Φ2以上Φ75以下のサイズを最少300kgから、またかしめ性と転造性を兼ね備えた、いわゆる重かしめ材という材質にて製作することも可能です。

またC2801の棒材はありますか?答えはNOです。 C2801とは60Cu-40Znのいわゆる六四黄銅と言われるもので、板もしくはコイル材しか市場に流通しておりません。この材質は加工の際に素材が柔軟に変形して破断しない、いわゆる展延性に優れており、建築用金具などにもよく使用されます。機械加工してみるとその違いは一目瞭然で、プレスで潰した場合、C3604は割れてしまいますが、C2801は伸びがよく粘りが違います。加工方法によってはC2801の棒材が欲しいという声を聞くことがありますが、残念なことに前述通りC2801の棒材というものは市中に存在しません。

C3602・C3604の寸法表

一般材

カドミレス材

まとめ

  • C3602はC3604に比べて粘りがあり、かしめ、冷間鍛造に向く。
  • C3604はC3602より切削性がよく、より機械加工に向く。
  • 中径、太径はC3604が多く流通している。
  • 細径はC3602も流通している。
  • C3602・C3604共に300Kgから製作可能。
  • C2801の丸棒は流通していない。