CB156、CB256【鉛フリー快削アルミ棒】について

快削アルミ棒の代表鋼種であるA2011が2006年7月施行のRoHS指令(欧州の環境負荷物質の使用規制)によって使用できないことが多くなり、16年が経ちました(2022年11月現在)。これら環境規制は世界的な広がりを見せており、材料選定において重要な基準となっています。

A2011の代替品としてA2017を使用される方、各アルミメーカーが製造している鉛フリー快削アルミ棒を使用している方、それぞれいらっしゃると思います。

今回は、A2011の代替品として株式会社UACJ押出加工(以下、UACJ)が製造するCB156とCB256について解説していきます。

CB156、CB256の成分表

SiFeCuMnMgCrZnTiPbBiSnAl
CB156≧0.4≧0.74.5-6.0≧0.3Bi+Sn=
0.9-2.3
Bal.
CB256≧0.4≧0.74.5-6.0≧0.30.6-
1.8
Bal.
A2011≧0.4≧0.75.0-6.0≧0.30.2-0.60.2-
0.6
Bal.
A20170.2-
0.8
≧0.73.5-
4.5
0.4-
1.0
0.4-
0.8
≧0.1≧0.25≧0.15Bal.

従来からの快削アルミ棒の代表鋼種であるA2011は何故使用できないのでしょうか?冒頭にもお伝えしましたが、欧州の法律であるRoHS指令によって鉛(Pb)の使用が制限され、A2011は鉛の含有規制値を超えてしまいました。それ以降ユーザーは代替品としてA2017(ジュラルミン)や鉛レスの快削アルミ棒等、他の2000番台のアルミ合金を使用しなくてはいけない状況となりました。UACJが製造するCB156は銅(Cu)、ビスマス(Bi)、錫(Sn)を添加した鉛フリー快削アルミで、A2011に近い切削性の材料です。また、CB256は銅(Cu)とビスマス(Bi)を添加しA2011とA2017の中間程度の切削性がある材料です。

CB156、CB256の機械的性質

合金系材質鉛量
(mass%)
引張強さ
(N/mm2
耐力
(N/mm2
伸び
(%)
2000系
鉛フリー
CB156-
T8
42032015
2000系
鉛フリー
CB256-
T8
44033015
2000系
従来材
A2011-
T8
0.644033015
2000系
従来材
A2017-
T4
44027520

CB156とCB256の鉛フリーアルミ合金は、同じ2000番台(Al-Cu系)のA2011と比べ機械的性質は近く、A2011相当の機械的性質があります。アルミ合金の中でも強度が高い材質といえます。

CB156、CB256の物理的性質

A2011-T8
鉛含有
A2017B-T8CB156-T8
鉛フリー
CB256-T8
鉛フリー
合金系2000番台
(Al-Cu系)
2000番台
(Al-Cu系)
2000番台
(Al-Cu系)
2000番台
(Al-Cu系)
密度2.842.792.842.84
線膨張係数
(30-100℃)
24.1x10⁻⁶/℃23.6x10⁻⁶/℃24.0x10⁻⁶/℃24.1x10⁻⁶/℃
ヤング率
(GPa)
70.370.370.3
ポアソン比0.340.340.340.34
熱伝導率
(W/(m・K))
153130169165

CB156、CB256の切り屑

CB156はA2011と同等の切削性があり、アルミ合金の中でもかなり切削性の良い材料です。切り屑が微細なため旋盤加工等の切削加工に向いています。 CB256は、A2011やCB156まではいかないものの、A2017とA2011の中間程度の切削性があります。

切削加工時の抵抗が大きく工具の消耗が気になる場合や、A2017の切削性に不満がある場合や加工時間の短縮にはCB156やCB256のような鉛レス快削アルミ棒を採用することでコストダウンにつながる可能性があります。

CB156、CB256の用途

CB156やCB256は各自動車メーカー、各種機械部品等に採用されています。

具体的には精密機械部品や自動車等のATバルブに使用されています。

CB156、CB256の耐食性

2000番台(Al-Cu系)のアルミ合金であるCB156やCB256は銅(Cu)を含むため、残念ながら耐食性は良くありません。耐食性を重視する場合、A2011やA2017を含む2000番台のアルミ合金自体が向きません。

CB156、CB256のアルマイト性

2000番台(Al-Cu系)のアルミ合金(A2011、A2017等)には銅(Cu)が含まれることから基本的にはアルマイトに向いているアルミ合金ではありません。ただし条件を変更することにより改善する場合もあります。

CB156、CB256の溶接性

CB156、CB256等の2000番台のアルミ合金は溶接には不向きなアルミ合金です。溶接の種類によっては割れが発生する可能性があるため注意が必要です。

CB156とCB256の注意点

CB156のデメリットとして高温時の使用には向きません。130℃付近で急激な衝撃値の低下がみられ、素材に割れが発生する場合があります。また、薄肉を残した切削加工時にも割れが発生する可能性があります。これは、錫を含むためで高温環境での使用や薄肉パイプ形状の加工が必要な場合はCB256かA2017を使用した方が良いでしょう。

CB156、CB256と快削黄銅棒(C3602・C3604)との比較

快削黄銅棒をCB156やCB256に材質変更することで製品の軽量化、コストダウンが可能になる場合があります。アルミニウムの比重は快削黄銅の1/3程度でありKg単価が高くても、製品1個の材料代が安くなります。ただし、切り屑の価格は快削黄銅の方が高い傾向にあるため、切削量が多い場合は一概にコストダウンになるとは言い切れません。

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CB156、CB256の市場流通性

CB156は市中品として流通しており入手は可能ですが、残念ながら、CB256は市場流通性は良くありません。CB256は一からの製作になる場合が多いようです(紐付き在庫品を除く)。通常、オーダーメイドで製作した場合は最少ロットが500Kgとなります。

CB156の取り扱い寸法

CB156丸棒

※CB256は製作(最少ロット500Kg)となります。

CB156、CB256のまとめ

  • A2011をRoHS規制により使用できない場合CB156やCB256等の鉛フリー快削アルミ合金を使用することでRoHS規制に対応することが可能
  • CB156はA2011と同等の切削性がある
  • CB256はA2011とA2017の中間程度の切削性がある
  • CB156は高温での使用や薄肉パイプのような加工には向いていない
  • CB156、CB256は2000番台(Al-Cu系)であることから耐食性、アルマイト性、溶接性は良くない
  • 快削黄銅(C3602・C3604)からの切り替えでコストダウンや軽量化が可能な場合がある

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